トム(Tom)とピート(Pete)トム: 私はシカゴで育ちましたが、遠い親戚がドイツでワイナリーを営んでいて、そこで数週間過ごした時に「ワインって素晴らしい」と心から思いました。その後、営業職としてワイン業界に入り、販売企画、スーパーマーケット向け営業、高級ワイン市場などを経験、試飲会やイベントを通じ、ますますワインに魅了されました。「次はどうする?」と考えて世界中のワインスクールを調べ、アデレード大学のワインビジネス修士コースに入学、そこでピートと出会いました。自分の興味は流通や営業で、在学中に米国企業ジャクソン・ファミリー・ワインズで働き始め、オーストラリアを拠点に11年間、その後9年前に東京へ移住、現在はワインコンサルティングをしています。ピート: 私は父が軍人だったので、オーストラリア各地を2年ごとくらいに引っ越しながら育ちました。父はアイルランド出身のワイン好き、母方はフランスで、ワインは毎日の食卓に欠かせない存在でした。最初はITの学位を取得しましたが、自分には向いていないと感じ、西オーストラリア大学で栽培学、その後アデレード大学で醸造学の学位を取得し、そこでトムと出会ったのです。私はヨーロッパのパスポートを持っていたので、大学卒業後はまずボルドーで2シーズン、その後チリとアルゼンチンでヴィンテージを経験、さらにウクライナのクリミアで働きました。クリミアでの2回目のシーズン途中でロシアのクリミア併合が始まり、急いで国を出ました。その後イタリアのアブルッツォでヴィンテージを経験、オーストラリアに戻ってからはピレニーズのタルターニやタスマニアのクローヴァーヒルで6年間スパークリングワイン造りに携わり、その後、キリカヌーンの主任醸造家としてクレア・ヴァレーにやってきました。トペ(TOPÉ)の始まりトム: 大学時代、私は「100 オズモンド」という住所の学生寮のような家に住んでいました。そこはワインを学ぶ学生たちのたまり場で、バーベキューや大人数でのワイン会などが頻繁に行われていました。ある日、2ブロックほど離れた場所に住んでいたピートがやって来て、家の裏庭で一緒にリースリングを飲みながら、「いつか自分たちもこんなワインを造ろう」と話したのが始まりでした。卒業後、それぞれ別の道を歩みましたが、2014-15年頃、私はメルボルンに住んでいてピートがオーストラリアへ戻ってきた時にも、このプロジェクトについて話し合いました。そして2020年2月、ピートがクレア・ヴァレーにいるときに私がオーストラリアを訪ねて話がまとまり、2021年にワイン事業を立ち上げ、ABN(事業登録番号)を取得、ブドウを購入してスタートを切りました。2022年には最初のリースリングを造り、その年の年末に初めてのワインをリリースしました。トペとクレア・ヴァレーピート: 大学時代は週末にセラードアで働いていて、営業後に残った開栓済みのボトルを持ち帰り、トムと裏庭でリースリングを飲みながら、果実の純粋さや、素晴らしい畑から生まれる美しい表現について語り合いました。複雑でありながらも難解ではないワインを造りたい――それが、私たちがずっと目指していたことです。「やろう」と決めたのは、ちょうどタイミングがよかったからです。私はすでに3年クレア・ヴァレーにいて、自分で管理できるセラーがあり、優れたブドウ栽培家の友人たちもいて、よい果実にアクセスできるという環境が整っていました。話をするだけなら簡単ですが、本当に重要なのは、適切な畑を確保し、それを必要なときに使える状態にしておくことです。トム: 私がクレア・ヴァレーで本当に好きなのはコミュニティです。トペが手がけているワインはすべて単一畑ですが、どの畑もそこに住む人々自身が所有し、管理しています。彼らにとって畑は、感情的にも経済的にも大きな意味を持つ存在で、生活の糧であり、子どもたちへ受け継がれていく財産でもあります。だから畑はとても丁寧に管理されています。ワインは、結局は人にまつわるもので、それこそが私たちのブランドを築くうえで欠かせない要素だと思っています。クレア・ヴァレーの気象条件とその可能性ピート: クレア・ヴァレーは、オーストラリアだけでなく世界的に見ても、非常に多様性のあるワイン産地の一つであるにもかかわらず、過小評価されている産地と思っています。リースリングもカベルネも、その中間にあるさまざまなスタイルのワインも造れる場所は、そう多くありません。クレア・ヴァレーは南オーストラリア州中央部にポツンとある高台で、オーストラリアの基準で考えると、かなり標高の高い産地です。谷底でも標高は約350mあり、アデレードから車で約1時間半ですが、緩やかな上り坂が続くため、標高の高さに気づかない人も多いです。海から1時間ほど内陸で、南オーストラリア州で最初に本格的な雨陰(rain shadow)*のエリアに差しかかる場所でもあります。それでも海から吹く水分を含んだ風がうまく入り込みますし、南オーストラリアの他の産地より北にあるため温暖な日が多いです。その一方で砂漠地帯の端にもあたるので、夜になると冷気が砂漠から谷に吹き下りてきます。山岳地の素晴らしい土壌、そこそこの降雨量、暖かい日中と冷涼な夜の適度な寒暖差、それらが組み合わさって、多様な風味と自然な酸を保った果実が生まれます。リースリングには理想的な環境ですが、リースリングだけでなく、グルナッシュにも自然な青い果実の風味があり、豊かでありながら引き締まった果実味を表現できます。私は、その風味の方向性が北ローヌに近いように感じます。ローヌ・ヴァレーでは、冷たい川が谷全体を冷やしていますが、クレア・ヴァレーでは砂漠から吹き下ろす冷たい夜風が同じような役割を果たしています。その結果、南オーストラリア州の中央部という独特な環境から、エレガントで美しいワインを造ることができるのです。クレア・ヴァレーの土壌ピート: この地域には、本当にあらゆる種類の土壌があります。クレア・ヴァレーは、長い年月をかけて形成された3つの山脈が平行に走る地形で、そのため斜面の向きや、30kmほど続く谷のどの位置にあるかによって、土壌構成が大きく変わります。リースリングに適する石灰岩質や砂岩質の土壌もあれば、アデレードの建築用スレートの主要産地として知られているミンタロの粘板岩質土壌もあり、トペのカベルネの畑もこの土壌です。こうした多様性は、素晴らしい個性を持つ区画を生み出せるという意味では恵みですが、一方で手間のかかる複雑さとも隣り合わせです。例えば、私たちのリースリングは、2つの別の畑の区画のブドウを使いますが、クローンはどちらも同じで、距離もわずか5kmしか離れていません。それでも味わいは全く異なります。一方はアーマー地区の硬い石灰岩土壌に植えられており、もう一方は反対側の尾根にある黄色い粘土質土壌です。同じ日に収穫し、同じように発酵させても、酸のラインやフェノールの特徴は大きく異なります。まさにテロワールを表現しています。今後の展望トム: 私たちは二人とも長年この業界で働いてきましたし、トペを正しい形で育てていきたいと思っています。自己資金で始め、すべて自分たちで運営しながら、少しずつビジネスを築いてきました。トペは私たちの情熱そのものであり、自分たちの名前を背負ったブランドでもあります。今後は、さらに異なるスタイルのワインにも挑戦したいと思っています。来年の新しいプロジェクトとして、セラミック製卵型タンクで仕込むリースリングを考えていています。テクスチャー豊かな面白いワインになるはずです。また、さらに樹齢の高い畑から造るグルナッシュにも取り組みたいと考えています。トペの5つのワインとブドウ供給畑すべてクレア・ヴァレー内の単一畑から。いずれも各畑に深い愛着を持つ栽培家が所有・管理している。#12863 トペ 100オズモンド・リースリング 2023(スクリューキャップ)畑名:ライムストーン(Limestone)所在地:アーマー(地図①)標高:380m土壌:石灰岩質樹齢:36年特徴:単一畑、無灌漑。やや冷涼な東向きの区画。牡蠣殻を思わせるミネラル感、果実の純粋さ、柑橘のニュアンス。品種:リースリング / Alc.11.6% / 残糖0.59g/L / 定価税込¥3,740ワイン名について:“100オズモンド”はトムが大学時代に住んでいた家の住所。#13306 トペ デュアル・シチズン・リースリング 2024(スクリューキャップ)畑名:ローズデール(Rosedale)所在地:ヒル・リヴァー(地図②)標高:390m土壌:黄色い粘土層の上に砂質ローム樹齢:25年特徴:単一畑、無灌漑。畑は東側の尾根に位置、西向きのため午後の日差しを受け、果皮が厚く、フェノールが増し、力強く凝縮した風味。品種:リースリング / Alc.10.4% / 残糖1.88g/L / 定価税込¥3,960 ワイン名について:二人とも二重国籍(デュアル・シチズン)であることから。2つ目のリースリングの意も。#13449 トペ P+R・カベルネ・ソーヴィニヨン 2023(スクリューキャップ)畑名:ラデンクロウ(Ruddenklau)所在地:ヒル・リヴァー(地図③)標高:500-550m土壌:濃い赤色で地下にスレート樹齢:25年特徴:単一畑。畑は東側の尾根で西向き、土中には花崗岩が混ざる。トマトの葉や赤ピーマンを思わせる青みの香り、黒系果実、粉っぽいタンニンが特徴。品種:カベルネ・ソーヴィニヨン / Alc.13.8% / 定価税込¥4,400ワイン名について:“P+R”は二人がバーで使っていた名。#13151 アフタヌーン・ロール・グルナッシュ (Afternoon Roll Grenache)畑名:パリッシュ(Parish)所在地:ウォーターヴェイル(地図④)標高:390m土壌:石灰岩の上に赤色ローム樹齢:6年特徴:単一畑、無灌漑。ウォーターヴェイル中央、尾根上の若い畑。粘板岩の上にテラロッサの粘土質で高酸性。青系果実の香りが華やかで重層的。品種:グルナッシュ / Alc.13.9% / 定価税込¥4,400ワイン名について:学期末試験が終わるたびにグルナッシュを飲みながら家の前でボールゲームをした思い出から。#13152 ハウス・オブ・ウォー・マタロ (Haus of Warr Mataro)畑名:アシュトン(Ashton)所在地:セヴンヒル(地図⑤)標高:470m土壌:粘土層の上に赤色ローム樹齢:106年特徴:単一畑、無灌漑。非常に低収量。濃密で力強い味わいと美しいスパイス感。エレガントながら妥協のない「たたかうマタロ」。品種:マタロ / Alc.13.8% / 定価税込¥11,330ワイン名について:ピートもトムもともに戦いや砦を意味する姓であることから。