ヴィレッジ・セラーズでは、一般社団法人 日本ソムリエ協会主催「J.S.A.ソムリエ・スカラシップ」への協力の一環として、2019年よりスカラシップ副賞「ルーウィン・エステート・ジ・アート・オブ・ファイン・ワイン賞」を授与、若手ソムリエを対象とする各年の受賞者に西オーストラリア州の取扱い生産者訪問の機会を提供しています。2025年は3月に西豪州7生産者訪問ツアーを実施。2024年受賞者で、今回現地を訪れた山田琢馬氏に寄稿していただきました。(写真:営業部 前田和也)世界でも有数のダイナミックなワイン産地オーストラリア。2025年3月、西オーストラリアへの訪問でその多様さをもって体感した。◆ オーストラリアリースリング第三の産地: フランクランド・エステート(フランクランド・リヴァー)パースから車で南下すること約4時間、フランクランド・リヴァーは鬱蒼とした森に囲まれた丘にブドウ畑が広がる。まるで陸の孤島のような場所だ。やや内陸というロケーションと強い日差しはリッチな赤ワインの産地を思わせるが、フランクランド・エステートでの試飲では、リースリングの高いポテンシャルが印象的だった。オーストラリアリースリングといえばイーデン・ヴァレーとクレア・ヴァレーの二大産地が思い浮かぶ。これらのリースリングは、還元的なタッチと骨太で堅牢な酸味が特徴で、ワインメイキングと標高の高さからくるダイナミックな日較差が反映されている。第三の産地フランクランド・リヴァーはというと、フランクランド・エステートの畑は標高280m程度、コーヒーロックの表土の下は栄養が多く、保水性に優れた粘土質土壌のため、ほとんどの畑が無灌漑による有機栽培だ。これによってブドウ樹の健康状態が向上し、収穫を少し引っ張ることが可能になるため、自然な酸と果実味のバランスが取りやすいという。またブドウの果皮で生成されるというTDN(ペトロール香)に関しては、なるべく減少させたいとのことで、生育中のブドウに当たる日差しをキャノピーで遮断するなど、栽培における工夫もしている。特に印象深かったのは彼らのフラグシップ「アイソレーション・リッジ・リースリング」だ。レモンやオレンジブロッサム、生姜、フリントのような香りとケロシンのニュアンス。伸びのある酸味とテクスチャの滑らかさが印象的で、どちらかと言えばドイツのリースリングに近いしなやかさが感じられる。長熟も予感させる素晴らしい味わいだ。フランクランド・エステート・ アイソレーション・リッジ・ヴィンヤード リースリング 2023(スクリューキャップ)品種:リースリング100%Alc.13.5%残糖6.2g/L定価税込¥5,500CODE:13009◆ 品種とスタイルの多様性: ピエロ(マーガレット・リヴァー), ラス・ヴィーノ(マーガレット・リヴァー), ヴィノ・ヴォルタ(スワン・ヴァレー)今回の旅を通して驚いたことの一つとして、スタイルの多様化が顕著に進んでいることが挙げられる。世代交代、気候変動、他地域に少ないシュナン・ブランへの取り組みなど様々な理由はあるが、多様化によって西オーストラリアという産地がより立体的になっていることは間違いない。ルーウィン・エステートと並んで産地を代表するシャルドネの生産者ピエロでは、創設者で総責任者であるマイケル・ペターキン氏の息子で、現在はピエロのゼネラル・マネージャーとしてワイナリー全体を取り仕切るニック・ペターキン氏がピエロを醸造する傍ら、ワイナリーの一部を間借りして自らのブランドであるラス・ヴィーノを手がけている。ピエロのリッチなスタイルとは対極のアンフォラ熟成させた質感の美しいシャルドネ、2025年は敷地内に生い茂る2種の花をブドウとともに漬け込んで酵母を起こしたピノ・ノワールのロゼや、一部全房発酵を取り入れたグルナッシュ、野生味と複雑さが調和したポルトガル品種のブレンドなど、彼の造るワインはとてもユニークだ。栽培も醸造も低介入だがオフフレーバーは一切なく、世界の至る所でフォーマルなワインメイキングを学んできた彼だから造ることのできる“ロジカルに基づいたナチュラル”を感じた。ニック・ペターキン氏またスワン・ヴァレーのヴィノ・ヴォルタではシュナン・ブランとグルナッシュを使った様々なスタイルを試飲した。西オーストラリアで最も温暖な産地にも関わらず軽やかで瑞々しいスタイルは、食事問わず様々なシーンで活躍するだろう。また、ヴェルデーリョを使ってマディラのように仕上げた酒精強化ワイン「インティメーションズ・オブ・インモータリティ(不死/永遠の命の暗示、の意味)」は甘美さと複雑さを感じる素晴らしい食後酒だった。ヴィノ・ヴォルタ:ガース・クリフ氏とクリステン・マクガン氏ヴィノ・ヴォルタ・インティメーションズ・オブ・インモータリティ リキュール・ヴェルデーリョ(500ml) NV(ガラス栓)産地:西オーストラリア州 スワン・ディストリクト品種:ヴェルデーリョAlc.:19.0%残糖:338.8g/L定価税込¥12,100CODE:13255◆ 圧倒的なスケールと自然との共存, ルーウィン・エステート(マーガレット・リヴァー)今回の旅の大きな目的の一つでもあったルーウィン・エステートの訪問。日本でもファンの多い生産者で規模や生産本数、敷地面積が大きいことは知っていたが、実際に現地に足を運ぶとその広さは想像を超えていた。驚くことに650haの広大な敷地の内、ワイナリーと畑はごく一部で、そのほとんどはカリと呼ばれるオーストラリア固有の木で鬱蒼とした森に囲まれていた。創業当初、一度はほとんどを伐採したが、自然な環境を取り戻すために3万本を植え直したとか。畑だけでなく森に生い茂る木々や小川もルーウィン・エステートを形成する貴重な一部だという。15種類のラインナップをシニア・ワインメーカーのティム・ラヴェット氏と試飲させてもらい、シャルドネのクオリティはもちろんのこと、カベルネの完成度の高さにとても感銘を受けた。適熟した黒系果実のトーンにユーカリや黒鉛、シナモンのような香りが混ざり合う。きめ細かいタンニンとメリハリの効いた酸味によって焦点の定まった精巧なテイストだった。カベルネのクローンは西オーストラリアに広く普及しているホートン・セレクション。フェノールがしっかりしているため、低温浸漬による優しい抽出を心がけている。生産量、質ともに世界トップクラスの安定感に終始圧倒された訪問だった。今回の訪問で、これまで自分自身の中にあった西オーストラリアワインへのイメージをブラッシュアップすることができた。この貴重な経験をお客様に広め、西オーストラリアの魅力をこれからも伝えていきたい。ティム・ラヴェット氏と試飲ルーウィン・エステートにて創設者のデニス&トリシア・ホーガン夫妻とルーウィン・エステート・アートシリーズ カベルネ・ソーヴィニヨン 2019(スクリューキャップ)品種:カベルネ・ソーヴィニヨン96%/マルベック4%Alc.:13.6%定価税込¥11,000CODE:12755