ヘレン・マスターズ(Helen Masters)とアシスタント・ワインメーカーのベン・トリニック(Ben Trinick)今年4月、アタ・ランギの醸造家ヘレン・マスターズより、2020年に仕込んだ4つのピノ・ノワールを紹介する動画が届きました。2020年ヴィンテージは従来のアタ・ランギ・ピノ・ノワール、マクローン・ピノ・ノワールに加え、2つの単一畑ピノ・ノワールが初めてリリースされました。畑の違いを表現する特徴的な4つのピノ・ノワールのリリースは、2020年だから可能だったとのこと。いつものハスキーで弾けるようなヘレンの声からは、その喜びが伝わってきます。 すべてがスムーズで素晴らしかった2020年ヘレン ―― 2020年は、気温、降水量、収量のすべてがいわゆる「適度」で、一年を通してブドウが健全にスムーズに生育した素晴らしい年でした。そして秋には気温が下がり、ブドウはゆっくり時間をかけて成熟、整然と収穫することができ、仕事を楽しめたヴィンテージでした。 このヴィンテージ特徴はワイン自体にも見て取れます。流麗な静謐さがあり、口当たりは優しいですが、長く深く続く広がりがあります。2020年のピノ・ノワールは4種、伝統的といえるアタ・ランギ・ピノ・ノワールと、この10年ほど毎年造っている単一畑マクローン、そして初リリースとなるコティンガとマスターズの2つの単一畑ピノ・ノワールです。異なる畑から生まれる4つの特徴的なピノ・ノワール―― コティンガ、マスターズ、マクローンの3つの畑は今から20-21年前、ほぼ同時期に植えられました。コティンガ・ヴィンヤードはワイナリーから400mほど下った、マーティンボロ・テラスの一番端にある砂利質土壌で、最も水はけが良い畑です。そのためミネラル感があり、ボディがしっかりした輝きのあるワインになります。コティンガのブドウはすべてディジョン・クローンです。アタ・ランギの畑は、通常マーティンボロー特有のエイベル・クローンが主で、ディジョン・クローンのみはかなり珍しいです。 マスターズとマクローンはともに砂利質混じりの粘土層土壌です。マスターズ・ヴィンヤードは町から4kmほど南にあり、私と夫と二人の子供たちとで植えたシャルドネとピノ・ノワールの畑です。アタ・ランギより少し冷涼で、南からの冷たい風をより多く強く受けます。粘土質と砂利質が混ざり合った土壌は深さ30mほどあります。植えてから20年が経過し、他の畑との違いが出て来たので、より冷涼な粘土質土壌が生み出す特徴を表現するため、2020年シングル・ヴィンヤードを造りました。 マクローン・ヴィンヤードはアタ・ランギのワイナリーのすぐそばにあり、しっかりした粘土質土壌です。ワインは土壌を反映して雄大さがあり、どれも魅力的です。 アタ・ランギ・ピノ・ノワールは、ワイナリーの周りに広がる古い畑から造ります。どの畑も土壌構成が似て、排水性が高いです。アタ・ランギの一番の強みは樹齢の高いブドウでワインを造れることです。ほとんどが樹齢30年、古いもので43年です。エクストラインタビュ-2021年以降のアタ・ランギとマーティンボロー―― 単一畑ワインは今後も続けていくつもりですが、2022年ヴィンテージは造りませんでしたし、2023年は様子をみているところです。2022年はアタ・ランギにとって、本当に試練の年でしたが、2023年も私が今まで経験したことないほど大変なシーズンでした。1年を通して雨が多く、収量も少なく、とても難しい年でした。2年連続して雨が多く、畑でもワイナリーでも選果に膨大な時間をかけました。2月半ばに襲来したサイクロンの被害は、ホークス・ベイほどひどくはありませんでしたが、雨がひどく、果実は熟す前に腐ってしまいました。オーガニックなので、特に畑では対応に追われました。 ソーヴィニヨン・ブランは、強い信頼関係で繋がっていた畑の所有者が変わり、今まで同様の質を期待できなくなってしまったため、外部からのブドウの購入をあきらめ、1. 5haの自社畑から少量を造り、セラードアでのみ販売することにしました。