醸造家以前のジョシュとキャロラインジョシュオレゴン州ポートランド育ち。父は17歳でスウェーデンから移民し、独力で医学部を修了、オレゴン州における女性医療の発展に貢献した産婦人科医でした。21歳だった1996年、両親から「一緒にブドウ畑のビジネスを始めないか」と誘われ、その計画に一気に魅了されて即座に電話帳を開き、最初に見つけたレックス・ヒル・ワイナリーに連絡しました。オレゴンでヴィンテージを3回経験し、オレゴン大学を卒業後、ブルゴーニュのボーヌへ渡り、フランスでドメーヌを運営するために必要な国家資格であるB.P.R.E.A.を取得しました。キャロラインブルゴーニュ、ボーヌ育ち。大学では教師を目指しましたが、自分には合わないと感じ、故郷に戻って醸造・栽培学を学びつつ、セールスとマーケティングのプログラムに進み、そこでジョシュと出会いました。オレゴンでワイン造りを開始私がフランスに渡った1998年、父はすでに苗木や支柱、ワイヤーを購入しており、私たちがフランスにいる間に最初の8エーカー(3.2ha)は植えられていました。家族で初ヴィンテージを造るため、1999年にキャロラインとフランスから帰国しました。しかし、最初のヴィンテージは、契約していたブドウの品質が悪く、断念せざるを得ませんでした。そんな中、アーチェリー・サミット・ワイナリーのゲイリー・アンドラスと新しい友人たちが助けてくれました。場所も設備も借り物、ブドウも購入――自分たちのものは名前だけ、しかもそのブランド名すら決まっていない、という出発でした。私たちは、ウィラメット・ヴァレーにおける「第三世代(サードウェーブ)」のワインメーカーにあたる存在だと思っています。第一世代は1960年代後半から70年代初頭のジ・アイリー、アデルスハイム、イーラス、ポンジーといった、いわば草創期の家族たち。第二世代は、1980年代末のアーガイルやドメーヌ・ドルーアンなど。その後、1990年代末のほぼ同時期に私たちやブルックスなどがスタートしました。それから約30年。現在はバイオダイナミック栽培の5つの畑(計約30ha)を持ち、自前の設備、専任スタッフ20名がチームを組んで運営しています。オレゴンでの位置づけとワインスタイルの変化畑はすべて創業時からバイオダイナミックです。テロワールを映し、熟成に耐えうるワインを造ることを目指しました。当初は、「より良いワインを造りたい」という自己中心的なものでしたが、畑で働き、家族が増えると、次第に「地球を守りたい」という意識へと変わっていきました。単にサステナブルであるだけでなく、リジェネラティブ(再生すること)でありたい。つまり、この土地を借りて農業をしている者として、始めたときよりもよい状態で次世代に引き継ぎたいと考えるようになったのです。ワインにおける自分たちらしさは、哲学だけでなく、味わいにも表れます。初期には成功しているスタイルを模倣していた時期もありましたが、経験を積み、技術者として自分たちの手法に自信が生まれてくると、自分たちの声を表現できるようになりました。大きな転機は、数年ほど経ち、この気候や土壌、植えた品種、クローン、台木の組み合わせを深く理解してきたとき「家で飲んで本当に美味しいと思うワイン」と「自分たちが造っているワイン」が違っていることに気づいたことです。それからブルゴーニュワインのように、食事とともに楽しめるワインを目指すようになりました。初めて日本を訪れ、鰹節、昆布、ウニの旨味を知ったときには、「この感覚をワインでどう表現できるのか?」と強く思いました。高い糖度やアルコールを狙うのではなく、より早く収穫し、明るさ、ジューシーさ、塩味、旨味を探求する方向へと舵を切りました。やるべきことは多く、一つのヴィンテージで成し遂げられるものではありません。何年もかけて、ゆっくりと、しかし確実に方向転換を行ってきました。人の成長や成熟と歩調を合わせるような変化です。自分たちは、ベルグストロムのワインを造っていると同時に、この地域性を最もよく表現するワインを造っていると信じています。「ワインは自然にできる」という言葉は信じていません。自然にできるのは酢です。パワー(抽出)からエレガンス(浸透)へ ―― 栽培と醸造過程での3段階すべての畑をアルコール度11.5%、12.5%、13.5%相当の3回に分けて収穫します。それを個別に発酵させ、最終的にブレンドすることで、過熟や高アルコールに頼らず、複雑味と自然な酸を得ます。5つの自社畑から約180ものワインを区画・クローンごとに仕込むのです。発酵槽は1.5〜3tの小型です。私たちが開発したのが、畑の中で使う選果テーブルです。長い収穫用トレーラーの上に設置されたテーブルで、収穫時点で不要な葉や異物を取り除きます。こうすることで果実に余計な負荷をかけることなく、選果されたブドウをそのままワイナリーへ運び、すぐにタンクへ投入できます。ワイナリーで選果作業を行う必要がなく、果汁の過剰な流出や、香り・風味のポテンシャルを損なうこともありません。さらに、ピノ・ノワールの醸造を3段階のプロセスに分けることを長年かけて構築しました。まずはボージョレのカルボニック・マセラシオンとやや似ている3〜4日間の嫌気状態での房内発酵(細胞内発酵)です。次に、タンクの蓋を開けてポンプオーバーやバケットオーバーを行います。これは「抽出」ではなく、「浸透」という考え方です。果汁で果実を優しく洗う感覚で嫌気的環境から好気的環境へと移行させます。その後、アルコールが高くなる前に圧搾し、果汁を固形物から離した状態でニュートラルな容器で発酵を完了させます。アルコールは発酵が進むにつれて種や梗からタンニンを引き出しやすくなるので、その前にプレスすることにより、シルキーでエレガントな質感が生まれます。この各畑での3度にわたる収穫と3段階の醸造プロセスの組み合わせによって、畑ごとの個性とブレンドの幅、そして何よりもワインのエレガンスを同時に実現することができます。ワイン造りのアプローチは長年にわたって大きく変化してきましたが、現在のスタイルが、自分たちが辿り着きたかった姿だと思っています。直近5〜7ヴィンテージのワインを、私たちは「ベルグストロム・スタイル」と呼んでいます。カンバーランドとシャルドネピノ・ノワールのカンバーランドは、2001年から造り続ける、ベルグストロムの名刺代わりともいえる最も大切なワインです。基本的には5つの畑の最良樽を集めたエステート・ブレンドで、数か月間をかけ、味を見ながらブレンドを決めていきます。ウィラメット・ヴァレー、ヴィンテージ、そしてベルグストロムの哲学を表現するワインです。それ以外、少量ですが5つの単一畑のピノ・ノワールも造っています。シャルドネのオールド・ストーンズは、私たちの哲学の結晶。活力、塩味、ジューシーさ、自然な酸、柑橘とその果皮、花のニュアンスを表現します。最大の特徴は、15年続く澱のソレラ。2011年から毎年、澱を継ぎ足し、サワードゥの種のように育ててきました。これが果汁に「記憶」と「質感」を与え、早摘みを可能にしています。シャルドネも近々、名前をオールド・ストーンズからカンバーランドに変更の予定です。(カンバーランドは、ポートランドに住んでいた頃ベルグストロム家があった通りの名前)これからの展望は?チュヘイラム・マウンテンズの丘に新たな土地を購入しました。標高300m、北向き、火山性土壌の約3ha。シャルドネとピノ・ノワールを植える予定で、収穫までは約5年。最後のエステートになるでしょう。24歳の長男はすでにフルタイムで働いており、次世代への継承も視野に入っています。ベルグストロムは世代を超えるワイナリーとして築いてきました。その未来がどう展開するか、楽しみにしています。ベルグストロムの5つの畑いずれの畑も慣行農法なし、植付当初よりバイオダイナミック栽培(認証なし)でリジェネラティブ農業を実践(ラ・スピラルのみ2019年から)。ベルグストロム(Bergström)AVA:ダンディ・ヒルズ標高:約106〜116m面積/植付:5.3ha/1999年土壌:玄武岩を火山性粘土が覆う品種:ピノ・ノワール、シャルドネワイナリー・ブロック(Winery Block)AVA:チュヘイラム・マウンテンズ標高:約122m面積/植付:0.8ha/2002〜2005年土壌:砂岩の上に海成堆積物の深い砂質品種:ピノ・ノワール、シャルドネシリース(Silice)AVA:チュヘイラム・マウンテンズ標高:約122m面積/植付:5.7ha/2001〜2006年土壌:砂岩の上に海成堆積物の深い砂質品種:ピノ・ノワール、シャルドネラ・スピラル(La Spirale)AVA:リボン・リッジ標高:約122〜137m面積/植付:8.9ha/2005年土壌:頁岩およびシルト岩盤を海成堆積物が覆う品種:ピノ・ノワール、シャルドネ、シラール・プレ・デュ・コル(Le Pré du Col)AVA:リボン・リッジ標高:約117〜122m面積/植付:6.5ha/2006年土壌:頁岩およびシルト岩盤を海成堆積物が覆う品種:ピノ・ノワール、シャルドネ掲載ワイン#12959 ベルグストロム ピノ・ノワール・ラ・スピラル・ヴィンヤード 2022産地:オレゴン州ウィラメット・ヴァレー、リボン・リッジ品種:ピノ・ノワール100%Alc.13.6%定価税込¥20,460ラ・スピラル・ヴィンヤード(渦の意味)のピノ・ノワールは、ウィラメット・ヴァレーでも屈指のフローラルな風味を持つ。樹齢19年以上。全房発酵、フレンチオーク小樽熟成(新樽10〜15%)、無清澄。花のブーケとスパイス香に肉っぽさと牡蠣殻のミネラル。口当たりはフレッシュで、「花びらを散りばめた瑞々しい果実の盛り合わせ」のよう。#12960 ベルグストロム ピノ・ノワール・ル・プレ・デュ・コル・ヴィンヤード 2022産地:オレゴン州ウィラメット・ヴァレー、リボン・リッジ品種:ピノ・ノワール100%Alc.13.3%定価税込¥20,460ラ・スピラルとほど近い距離にある畑で、所有はヒル家だが、当初からベルグストロムが栽培・管理。樹齢18年以上。全房発酵、フレンチオーク小樽熟成(新樽10〜15%)、無清澄。赤から深紅の果実が見事な塩味を伴って軽快に広がり、シャープな酸とミネラル、奥行きあるストラクチャーは長期熟成の可能性を感じさせる。#13426 ベルグストロム オールド・ストーンズ・シャルドネ 2023産地:オレゴン州ウィラメット・ヴァレー品種:シャルドネ100%Alc.13.3%定価税込¥9,3503つの畑(ベルグストロム、ル・プレ・デュ・コル、シリース)から。平均樹齢25年。ゆるやかに全房圧搾したフリーラン果汁をフレンチオーク樽で自然発酵(新樽10〜15%)、100%MLF。澱とともに12ヶ月間樽熟成後、ステンレス槽で6ヶ月間熟成。持続的なミネラルが骨格となり、白パイナップルと柑橘が豊潤に口中を満たす。#13427 ベルグストロム ピノ・ノワール・カンバーランド・リザーヴ 2023産地:オレゴン州ウィラメット・ヴァレー品種:ピノ・ノワール100%Alc.13.6%定価税込¥9,350ダンディ・ヒルズ、チュヘイラム・マウンテンズ、リボン・リッジ、ヤムヒル・カールトン、エオラ・アミティ・ヒルズのバイオダイナミック、有機栽培またはLIVE認証取得畑。樹齢26年以上。全房発酵、フレンチオーク小樽熟成(新樽10〜15%)、無清澄。鮮やかな赤い果実に砂質土壌由来の塩味と軽やかなオークが深みを加える。