インタビュー動画&抄訳(後編)前編はこちら5. 醸造家の仕事・ブレア・ウォルターは、なぜ醸造家に? Why did you become a winemaker?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F4yC3QteSPEQ%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E私は農家の生まれで、幼い頃から農業が好きでした。カンタベリーのリンカーン大学で園芸学を専攻、3年の時に交換留学生としてオレゴン州立大学に行き、ワインの科学やブドウ栽培学に触れました。翌年、ニュージーランドに戻ると、リンカーン大学でもブドウ栽培とワイン醸造学のプログラムが開設されました。心から楽しいと思えることに出会え、卒業後はすぐにワイナリーで働こうと決心しました。私は、醸造という科学と芸術性がユニークに組み合わさった仕事が大好きです。フェルトン・ロードでは、販売やマーケティング、そして小さな会社の経営に携わるという側面も楽しんでいます。・今後10-30年の人生計画は? Where do you see yourself in the next 10, 20, 30 years?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FnBhY9Aq-4lA%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E幸い多少の株も持っているので、外に出て自分の会社を立ち上げる必要はありません。身体が動く限り、ここで働くつもりです。醸造の仕事は、95%が2月から5月に集中します。それ以外の時は、国内外での販促など、季節によって仕事の内容が変わるのは楽しいです。・若い醸造家へのアドバイス What's your advice to young winemakers trying to find their way?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FC24oA_AZbzo%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eワインに深い情熱を持つこと、ワインの本や雑誌を積極的に読み、試飲会などでできるだけ深く幅広くワインを試飲することです。ワインを開ける時に呼んでくれる金持ちのコレクターと知り合うのも大事です。世界の偉大なワインはより高額になり、収集の対象になっています。ワインの質の深さを理解するとワインの歴史と伝統も分かるようになります。自分の方向性を見つけ、世界の偉大なワインを理解するために、素晴らしいワインに触れる機会をみつけることが大切です。6. ワインのアルコールについて・若い人のアルコール離れについて There is a trend that young people are moving away from alcohol. How do you think this will impact your winery?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FGQ3ZVebrj8U%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E自己満足に聞こえなければ良いのですが、私たちは年間生産量10,000-12,000ダースの小さなワイナリーです。安くはないし、保守的でかつ比較的余裕がありワインを知っている層が市場と言えるでしょう。中・低価格帯ワイン生産者には若年層のアルコール離れは心配だろうと思いますが、そのような生産者がワインの飲み手を教育して、将来的に自分たちのようなワインを楽しむ層をつくってくれることを期待しています。アルコールに敏感な昨今ですが、素晴らしい食事にあわせて高品質ワインを適度に楽しむ文化は残って欲しいですね。・美味しいノン・アルコール・ワインをつくるのは難しい? Why is it difficult to make alcohol free wines that taste good?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F2colLD8CQhc%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eアルコールはワインの10-15%ほどを占め、それがボディと口あたりをワインに与えます。アルコールは体を温めるだけでは無く、中口蓋で感じる味わいの広がりを与えるのです。昔、大学の実験でアルコールの比率を変え味覚テストをしたことがありますが、アルコールはワインの個性と品質に大きな影響を与えるのです。ワインの主要素であるアルコールを抜いて、テロワールや特定の土地について語るのはかなり難しいと思います。本来あるはずのものを抜くという大操作をするわけですから。7. フェルトン・ロードのワイン・フェルトン・ロード・シャルドネ Felton Road Chardonnay%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fm8HuFQ4VTa4%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eシャルドネは、ヴィンテージ毎の変化にも対応しやすい品種で、気候が温暖でも冷涼でも上手くいきます。ピノ・ノワールはその点、生育期の違いが顕著に表れます。フェルトン・ロードのシャルドネのスタイルは以前から変わっていません。かなり以前から新樽の使用を控え、ブロック2やブロック6には新樽は全く使っていません。また瓶詰前の清澄や濾過もしません。シャルドネには大いに期待しています。現在、クローンや台木を見直して植え替えをしており、今後数年で生産量の拡大を見込んでいます。シャルドネはとても人気があり、生産量の約20%を占めています。・フェルトン・ロード・リースリング Felton Road Riesling%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FIC-lBw42t6k%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eリースリングは生産量の約10%を占めており、当初よりドライ・リースリングとリースリング・バノックバーンを、その後ブロック1を少量造ってきました。バノックバーンのテロワール、シスト土壌、シンプルな醸造、そしてセントラル・オタゴの冷涼気候が育む酸は、フェルトン・ロードのリースリングの特徴です。 オーストラリアやその他温暖地で栽培されたリースリングとは異なり、冷涼気候で造られたリースリングにはTDN(トリメチルジヒドロナフタレン)、つまりペトロール香のような特徴は現れません。熟成が進んでも、果実は非常にピュアで純粋な状態を保ち、時に微かにTDNを感じますが、さほど強くありません。とても安定して熟成するので、瓶の中での時の流れを感じさせません。20年熟成のリースリングを開けると、その若々しさや活気ある果実味に、みな驚きます。・ヴァン・グリについて Vin Gris%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FLVzexzWLoK8%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eピノ・ノワールの若木は、天候により、高品質ワインに最適と思われる以上の大きな房や果粒をつけることがあります。ヴァン・グリは、果皮と果汁の比率バランスを調整するためにブルゴーニュでも行われている手法で、除梗直後、果汁に色が付く前に7-10%の果汁を抜きとります。以前は若木が多かったので、ヴァン・グリを定期的に造っていましたが、今回の2021年は2016年以来です。セニエと言っていますが、これはフランス語の「血を抜く」という言葉で、果汁の一部を抜くことです。2021年のコーニッシュ・ポイントは雨の影響で少しブドウが大きかったのです。2022年も少量造りました。ロゼではなくヴァン・グリとしているのは、色がほとんどなく、ごくごく薄いサーモン色、ないし玉ねぎの皮の色合いだからです。またフェルトン・ロードのロゼは1999年に初めて造りましたが、当時のニュージーランドのロゼは濃いピンク色で甘いものが多く、それらと距離をおきたいと思いました。この商品は日本とイギリスにしか出荷していません。・マクミュアー・ヴィンヤード MacMuir Vineyard%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FrE4YxASGAwE%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eマクミュアーは2012年に植えました。カルバートに比べ、かなり高密度で植えられています。カルバートからほんの300mほどの場所で土壌も似ていますが、西から北向きの列で、植栽密度が高く、改良された台木とクローンを採用しています。近く単一畑ワインとしてご案内します。品質は抜群です。・植え替え計画とは Replanting schedule%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FSM23zPjN_lg%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E1992年に植えられた初期のブドウ樹の幹は今も現役ですが、一部に自根も残っているのでフィロキセラが心配です。80%以上は台木なのでさほど脆弱ではありませんが、植える品種や台木を変えたほうが良い場合もあります。今でも様々なクローンを採用していますが、フェルトン・ロードに合う新しいクローンにはいつも目を光らせています。昨年と今年は植え替え無しですが、2023年と2024年は小さな区画で予定しています。より良い台木、クローン、整枝、畑のデザインを求めて植え替えは続きます。一斉に樹齢が高まるのは好ましくないので、恐らく2、3年毎に3%以下と、少しずつですが、時間をかけて進めていきます。30年後にナイジェルの子ども達が畑を受け継いだ時、ブドウ樹がすべて60歳で一気に植え替えが必要という事態は避けたいので。8. エピローグ ―― 社会につながるウクライナへのかかわりSupporting Ukraine%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F_lTLOYPFFsU%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eロシアがウクライナに侵攻してすぐ、フェルトン・ロードではロシアへのワインの輸出を止めました。メールで今後はサポートできないし、出荷もしないと伝えたのです。かなりの未払金が残っていましたが、それは帳消しにしました。同時に、すでにウクライナで活動していた「国境なき医師団」に寄付をしました。ウクライナの取引先輸入会社は爆撃で支払い済みのフェルトン・ロードの在庫をすべて失ってしまったので、彼らには次のヴィンテージを無償で輸出します。ウクライナからは毎日メールで近況報告が届きます。このことをジャンシス・ロビンソンに教えると彼女はその日記を「キーウ(キエフ)からの手紙」として自分のウェブサイトに掲載してくれています。