日本でのフェルトン・ロード新ヴィンテージ・リリースは毎年6月。今年はピノ・ノワールとシャルドネは2020年、リースリングとヴァン・グリは2021年となります。自然を相手に年に1回だけ造るワインは、醸造家にとって似ている年はあっても、毎年が新しい経験だというブレア・ウォルター氏は、コロナ禍での3回目の収穫も従来と変わりなく無事手摘みし、フェルトン・ロードでの26回目の仕込みを終えたばかり(インタビューは5月初め)。ここに書ききれなかった詳細は、こちらからご覧ください。ちょうど今、ヴィンテージが終わるところです。セントラル・オタゴはとてもよい年でした。平均より少し暖かく、いつもより多少早めに雨もなく収穫でき、果実はとてもきれいで芳醇、バランスもよく、収量も平年並みでした。この地域では今年、初めて新型コロナに感染した人が出たのです。とても神経質になり、慎重に行動しました。フェルトン・ロードのような小規模ワイナリーでは、欠員が出ればヴィンテージ作業全体に大きな支障が出ます。誰も病気にならず終了でき、ほっととしています。コロナ禍となってから、収穫を手伝ってくれていた海外からのピッキングスタッフがほとんど皆、国に帰り、新しく応募してくる人もいませんでした。フェルトン・ロードでは毎年手伝ってくれる地元の人たちがいるので、タイミングを合わせて手摘みできましたが、世界各地から集まってくるピッカーたちの賑やかさがないのは寂しいです。また皆が旅行するようになり、ワイン好きたちが世界中から集まってきてくれるのを楽しみにしています。ただ、今年はオーナーのナイジェル・グリーニングが2年ぶりにイギリスからやってきて、素晴らしいヴィンテージ・ランチをたびたび作ってくれました。◆2020年と2016年を振り返る2020年平均より少し冷涼な年で、生育期は神経を使いました。12月中は小規模な霜が3回ほどあり、雨も比較的多く、1月は乾燥していましたが2月は雨、3月は雨は降りませんでしたが曇って寒かったです。収穫期に気温が上がらず成熟がゆっくりだったのでちょうどよいタイミングを見計らって収穫できました。結果として、実は小さいがよく熟して風味が凝縮し、溌剌とした酸を保持した果実になりました。ワインは深みとしっかりした個性を表現しています。この年は、「コロナ難民」、つまりコロナ禍のロックダウンで帰国できずニュージーランドに留まるしかなかった若いピッカーがいてくれて助かりました。2016年生育期は温暖で、収穫時期の6週間前、2月に暑い日が続いて成熟が早まり、収穫も早くなりました。ヴェレゾン(果実が色づく)時期に強い日射が続くと却ってアントシアニンの定着が減少するようで、ボディも色づきも軽くなりました。また通常の感覚に反するのですが、温暖な年は糖度が上がる前に風味が熟すので、アルコール度も多少低めでした。ただ色が薄めといってもこれは比較の問題で、ご存じのようにセントラル・オタゴのピノ・ノワールは色が濃いのが特徴です。自分たちが色が明るいと思う年、海外市場ではブルゴーニュのように繊細、緻密、透明感があると喜ばれるのです。いま味をみると、だいぶ落ち着き熟成感が出始めてはいますが、まだかなり若々しくもあり、少なくともこれから10年はよい感じで熟成していくと思います。◆ ヴィンテージにより醸造方法はどう変わる?ワインのスタイルに影響を与えるのは、いつ暑くなったか、またはならなかったかということです。醸造に際して、毎年あらゆる要素を考慮しますが、フェルトン・ロードにとって最も大きな変数は全房発酵の比率です。2016年のような年は、透明感が強いと同時に熟度も高い、という2つの相反する要因がありました。果実も梗も良く熟しているので全房を多くするとよいと考えますが、果実がかなり早く熟したので果実には梗の風味を支えるだけの熟度の深さと凝縮が足りないかもしれません。その場合、全房が多いと青臭い風味がワインに出てしまうので量を控えます。冷涼な年は果実と梗からの青さが強くなり過ぎないよう、当然、全房を控えます。最終的に毎年20-25%の全房に落ち着きます。フェルトン・ロードを好む人たちは、ヴィンテージ毎の畑の個性の表現を楽しんでいるので、畑の個性を覆い隠すような強い梗の風味は避けたいです。幸いなことにセントラル・オタゴはヴィンテージが毎年安定しています。山に囲まれ、雨も少ない産地です。内陸にあり、ニュージーランドの東側が受ける太平洋の強風からも守られているので生育期の心配はありません。今回が26回目の収穫で、確かにここ5-7年は当初の5-7年に比べて気温が上がっているかもしれませんが、大きな違いではなく、気候変動の影響は今のところ、大陸ほど大きくはありません。毎年単一畑ごとのワインを造り続けるのは、ヴィンテージの違いよりヴィンテージを通して出てくるその畑の個性の違いを表現したいからです。特別な質の年にリザーヴとして別のワインを造るのとは違うアプローチです。◆ ウクライナへのサポートロシアがウクライナに侵攻してすぐ、フェルトン・ロードではロシアへのワインの輸出を止めました。同時に、すでにウクライナで活動していた「国境なき医師団」に寄付をしました。ウクライナの取引先の輸入会社は爆撃でフェルトン・ロードの在庫をすべて失ってしまったので、彼らには無料でワインを輸出します。彼らはロシア侵攻の最初の日からブログで日記を書き続けています。このことをジャンシス・ロビンソンに教えると彼女はその日記を「キーウ(キエフ)からの手紙 (Letters from Kyiv)」として自分のウェブサイトに掲載してくれています。 フェルトン・ロード 2020年ロックダウン下での収穫An extraordinary vintage Felton Road lockdown harvest%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FW3cXnlZooUw%22%20title%3D%22%E3%80%90%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%202020%E5%B9%B4%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E4%B8%8B%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%8F%8E%E7%A9%AB%EF%BC%88%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%20%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%AB%EF%BD%A5%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%B4%EF%BC%89%E3%80%91An%20extraordinary%20vintage%20Felton%20Road%20lockdown%20harvest%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E