ルーウィン・エステートのフラグシップ「アートシリーズ・シャルドネ」と「アートシリーズ・カベルネ・ソーヴィニヨン」の日本での新年号は、毎年、本カタログ秋号でご案内しています。今年リリースとなるのはシャルドネが2019年、ワイン専門誌各誌で高得点を獲得したヴィンテージ。またカベルネ・ソーヴィニヨンは、ルーウィンのメンバーが「WOW(すごい)!」と表現する2018年です。3代目シニア・ワインメーカー ティム・ラヴェット氏に、ワイナリーの近況と併せて話を聞きました。素晴らしかった2023年を総括ヴィレッジ・セラーズ(VC)―― お時間をありがとうございます。昨年の今頃お話を伺った時には、雨でずぶぬれになっていらしたことを覚えています。今日は大丈夫ですか?ティム―― 横殴りの雨と強風で午前3時に目が覚めました。今日ここに来るまでの運転もかなり大変でしたが、今は少し収まっているようです。この辺りでは、4月の収穫が終わった後、ブドウ樹が休眠から目覚める9月までに年間降水量の80%が降ります。この雨はブドウ樹の生育に欠かせない大切なものです。VC―― そうですね。2023年は、前年の11月から3月まで1滴も雨が降らなかったと聞きました。ティム―― はい、2023年は素晴らしいヴィンテージでした。乾燥した好天に恵まれ、目立った気候問題や病害プレッシャーもなく、高品質果実が満足のいく収量で収穫できました。各地から収穫を手伝いに来てくれるピッカーの人数が、今回はコロナ禍以前のレベルまで戻ったので、収穫作業もかなり楽でした。マーガレット・リヴァーに人々が戻ってきてくれたのは本当に嬉しいことです。収穫も終わり、今は65人で剪定作業をしていて、畑はいつも活気に溢れています。VC―― 植え付けは順調に進んでいますか?ティム―― とても順調です。カベルネ・ソーヴィニヨンを3つの畑に植えました。ヘリコプター・ヒル(2021年)、ヘンリーズ(2019年)、イースト・ヒル(2017年)の3か所です。カベルネのホートン・クローンは、その形態やタンニン構成から違いを識別する研究が長年進められてきました。ルーウィンで栽培しているのは、明るく香ばしい風味のH5、大らかで丸みのあるH20、そしてボルドー種の337です。クローン毎の特徴の違いは味わいに出るので、これまで以上に的確なワイン造りができることがとても楽しみです。昨年お話しした2016年植樹のイースト・ヒルのシャルドネも引き続き順調で、それも楽しみにしています。# 12280ルーウィン・エステート アートシリーズ・シャルドネ 2019Leeuwin Estate Art Series Chardonnay希望小売価格 ¥14,500(税別)品種:シャルドネ 100%Alc. 13.8%99pts Ray Jordan WA Wine review 2023;98pts Robert Parker’s Wine Advocate;95pts Wine Spectator シャルドネには、主にブロック20とブロック22の2つの畑の果実を用います。どちらも1970年代後半に植えられたジンジン・クローン=通称「ヘン&チキン(Hen and Chicken, 雌鶏と雛)」で、1つの房に大小様々な粒が実ります。大きい果粒は果実味、小さい果粒は美しい酸のストラクチャーを表現します。2019年は全般に乾燥して冷涼だったため、ジャスミンやプルメリアの繊細なアロマに加え、ルーウィン・シャルドネの特徴である洋梨、切りたてのライム、白桃の風味を持つ極めて優美なワインに仕上がりました。 ブドウは手摘みしてすぐに冷却し、大部分は除梗して果皮と一緒に低温浸漬します。一部は全房圧搾し固形物との接触を長くすることで、石墨やポップコーンのような風味を引き出します。冷涼年の酸を保つため、前年よりキメが細かく柔らかな焼き加減のボルドー産フレンチオーク新樽で発酵・熟成しました。MLF発酵はしていません。頻繁にバトナージュしながら11ヶ月間熟成、各樽をブレンドし、清澄、低温安定化した後、瓶詰めします。ワインは純粋で透明感に溢れ、背後にはシナモン、炒ったヘーゼルナッツ、ヌガー、パンナコッタや火打石、黒鉛が感じられます。ミネラルと酸に裏打ちされた明るくエネルギッシュな味わいで、瓶内熟成とともに果実の風味の要素が開き始めています。#12279ルーウィン・エステート アートシリーズ・カベルネ・ソーヴィニヨン 2018Leeuwin Estate Art Series Cabernet Sauvignon希望小売価格 ¥9,200(税別)品種:カベルネ・ソーヴィニヨン 97%/ マルベック 3%Alc. 13.8%97 pts 2022 Halliday Wine Companion97 pts Huon Hooke, The Real Reviewアートシリーズのカベルネは、1975年に植え付け、無灌漑栽培するブロック8の果実が主体です。とても粒が小さく果汁に対する果皮の比率が高いので、力強いワインになります。2017年の冬に雨が多く降り、その後穏やかで乾燥した生育期が続いた2018年は、理想的な最高のヴィンテージでした。ブロック8は日当たりがよく、ブドウは畑の両側から日射を充分に受けるので、果実のタンニンが生理的成熟に達し収穫する頃には、ダークチェリーだけでなく、ラベンダーやスミレ、クミン、クローブ、コリアンダーなど驚くほど鮮やかで豊かな風味を備えます。 手摘みしたブドウは一粒ずつ丁寧に選果し、発酵前に低温浸漬、さらに発酵中はポンプオーバーでタイプの異なるタンニンと色素を抽出します。その後、新樽50%、1年使用50%のボルドー産フレンチオーク小樽に移してマロラクティック発酵させ、そのまま合計22ヶ月間熟成しました。 ワインは今、カシスやダークチェリーといった黒い果実の濃厚な香りにスミレ、月桂樹、香ばしいスパイス、黒鉛、火打石のニュアンスがあります。アルコール度数は13.5%と控えめですが、口に含むと、力強いカシスの果実味に幾重にも織り込まれたミネラルを伴う酸、豊かな風味、シルキーなタンニンが感じられます。