ルーウィン・エステートのフラグシップワイン、アートシリーズ・シャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンは、毎年本カタログ秋号で日本での新ヴィンテージ・リリースとなります。今年はシャルドネが2017年、カベルネ・ソーヴィニヨンが2016年です。この2つのワインとワイナリー、マーガレット・リヴァーの近況について3代目シニア・ワインメーカーを務めるティム・ラヴェットに話を聞きました。◆ ワイン生産者の冬は忙しい?ヴィレッジ・セラーズ(VC)―― お忙しい中お時間をありがとうございます......というか、この時期(オーストラリアは冬)、忙しいものですか?ティム―― 忙しいですよ(笑)。今はシブリングス・ソーヴィニヨン・ブラン2021を瓶詰めしているところで、その後アートシリーズ・リースリング2021、クラッシック・ドライ・ホワイト2021、アートシリーズ・シャルドネ2020のボトリングが予定されています。ヴィンヤードでは剪定が行われていて、さらにルーウィン・エステートの敷地内に15haの畑を新たに拓いています(カベルネ、シャルドネ、シラーズを植栽)。ブドウの樹は眠っている状態でもスタッフには仕事がたくさんあります。VC―― シドニーやメルボルンでは、またロックダウンが行なわれていると聞いています(2021年8月現在)。マーガレット・リヴァーもですか?ティム―― 西オーストラリアは位置的に孤立しているので、幸いコロナ感染のケースは少ないですが、相変わらず他州からの移動は制限されています。州内であれば特に移動などに制限はありません。もっともオーストラリアでワイン産業はエッセンシャル・サービス(必要不可欠な仕事)の一つと指定されているので作業ができなくなることはないのですが。◆ 恵まれた環境を生かすヴィンヤード・マネージメントティム―― マーガレット・リヴァーは西オーストラリア州の州都パースから南西に約350km離れ、周囲を海に囲まれた産地です。海に囲まれているおかげで、涼しいヴィンテージと暖かいヴィンテージはあっても極度に寒い、または暑いヴィンテージがあるわけではありません。穏やかな環境に恵まれているので、畑の管理を綿密にして、自分たちがワインに求める特徴が果実に表れるタイミングで収穫することを心掛けています。素晴らしいワインというのは畑で生まれるもので、ワイナリーで造られるものではないと考えています。CODE 11441ルーウィン・エステートアートシリーズ シャルドネ 2017 (スクリューキャップ)Leeuwin Estate Art Series Chardonnay 2017希望小売価格 ¥10,500品種 シャルドネ 100%Alc. 13.6%Title: Veiled Spectrum VArtist: John Young99pts Halliday Wine Companion 2021アートシリーズ・シャルドネには、ブロック20とブロック22という2つの畑の果実を主に使用しています。これらの畑では、通称「ヘン&チキン(Hen and Chicken, 雌鶏と雛)」と呼ばれ、1つの房に大小さまざまな粒が実るジンジン・クローンが栽培されています。大粒の実が備える果実味と小粒の実に凝縮された酸とのバランスが素晴らしいブドウです。このクローンはしっかり成熟させる必要があります。2017年は例年より涼しく、冬・春と雨量の多いヴィンテージだったので早いうちから除葉し、日照条件を向上させました。結果、例年より3週間ほど遅れましたが、ライム、洋ナシ、グレープフルーツなどエレガントで豊かな風味を備えたシャルドネが収穫できました。アートシリーズの醸造は、手摘みして除伷、低温浸漬、圧搾、樽発酵、フレンチオーク新樽100%で11ヶ月間樽熟成、と大まかには決まっていますが、2017年は2016に比べて全房圧搾の比率を少し増やすことで、マスト(果汁)に含まれる固形物(果皮や果肉の細胞片)を増やしました。洋ナシとライムの特徴に加え、牡蠣の殻、軽くトーストしたアーモンド、ナツメグの香ばしさが感じられるヴィンテージです。CODE 11440ルーウィン・エステートアートシリーズ カベルネ・ソーヴィニヨン 2016 (スクリューキャップ)Leeuwin Estate Art Series Cabernet Sauvignon 2016希望小売価格 ¥7,500品種 カベルネ・ソーヴィニヨン 99%、マルベック1%Alc. 13.4%Title: Where's the gift shop?Artist: Tony Coleing & Chloe Watson97pts Halliday Wine Companion 2021カベルネ・ソーヴィニヨンは果実に含まれるメトキシピラジン[i]という天然化学物質の影響もあり、天候をとても忠実に表します。タンニンの熟度を見計らって果実を収穫するため、涼しい年には芳香性が、暖かい年にはワインにはフルーツ感と骨格がより表現されるようになります。つまりシーズン中の天候によってこの2つの要素と表現のバランスが変わります。2016年は2015年と比べて暖かかったので、香ばしいスパイスやハーブが果実を鮮やかに彩る2015年のスタイルに対し、2016年はエレガントな芳香性としっかりした酸、果実の存在感が伝わってきます。丁寧に手摘みしたブドウは、畑で生成された果実の特徴をできる限り表現するよう醸造し、発酵・熟成の過程を通じて計22ヶ月間ボルドー産の最高級フレンチオーク樽[ii]で寝かせました。黒や青の力強い果実にカカオ、コーヒー豆、アニスの香ばしさと粉っぽいタンニンが美味しいです。[i] ピーマンやハーブの芳香を表す物質で、冷涼気候で育つ果実に多く含まれる。[ii] アートシリーズ・カベルネ・ソーヴィニヨンに使われる板厚22mmのフレンチオーク樽を作るには特にきめの細かい最高級品質のオーク材が不可欠。