毎年、この秋のカタログからルーウィン・エステートのフラッグシップワイン「アートシリーズ」のシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨン新年号の販売を開始しています。現地では、それぞれ約半年~1年前にリリースされていますが、日本の嗜好を鑑みて、輸入後1年近く自社セラーに寝かせてからのリリースです。今回は、シャルドネが世界各地で多数の受賞に輝く2018年、カベルネ・ソーヴィニヨンは2017年で、これも高い評価を得ています。海に囲まれた産地ならではの冬の嵐で大荒れの日、3代目シニア・ワインメーカー、ティム・ラヴェット氏に話を聞きました。シニア・ワインメーカー ティム・ラヴェットヴィレッジ・セラーズ(VC)―― お忙しい中、お時間をありがとうございます。ティム―― 外は大荒れの天気なので、屋内にいる口実をいただき、こちらこそ感謝です。今日は風速140㎞の強風、1日で100㎜の猛烈な雨、そして雹(ひょう)、雷もです!冬は2-3年に一度、このような嵐に見舞われるのですが、海に囲まれた地ではそれも生活の一部です。ブドウは剪定後、休眠中なので影響を受けませんが、私たち人間は毛布にくるまっていなければなりません。VC―― 今日は新しい畑の植え付けはできませんね。 ティム―― 実際の植え付け作業はしませんが、畑の栽培計画をまとめていて、シャルドネを植えるための土壌の質、畑の向き、クローン、防風や遮光の有無など重要事項を検討していました。赤品種には100年以上生きるものもありますが、シャルドネの寿命は一般に60年から70年とされています。アートシリーズ・シャルドネの主要な畑であるブロック20とブロック22は、すでに樹齢45年以上経っていますから現時点で特に重要ともいえます。ルーウィンが所有する660haの土地で、ブドウが植えられている場所は4分の1に満たないので、新たに調査して畑にする場所はまだたくさんあります。VC―― 特に注目している畑はありますか?ティム―― まだ断言はできませんが、2016年に植えたイースト・ヒルのシャルドネは素晴らしいです。毎年、全ての樽をブラインドでテイスティングしてブレンドを決める日があるのですが、イースト・ヒルのワインは今のところ安定して高得点を取っていて、この畑を生み出した“親”の1人として誇らしい限りです。まだ若い畑なので、アートシリーズ・シャルドネに使うには長熟可能性をしっかり検証していく必要がありますが、とても期待しています。CODE 11629ルーウィン・エステート アートシリーズシャルドネ 2018 (スクリューキャップ)Leeuwin Estate Art Series Chardonnay希望小売価格 ¥11,500品種 シャルドネ 100%Alc. 13.9%98pts & Top place Chardonnay Varietal Award, 2022 Halliday Wine CompanionNo.1 of The Judgement of Napa 2021ブドウは主に1970年代後半に植えられたブロック20とブロック22の2つの畑からで、どちらもジンジン・クローンです。「ヘン&チキン(Hen and Chicken, 雌鶏と雛)」とも呼ばれるクローンで、1つの房に大小さまざまな粒が実り、大きい果粒は果実味、小さい果粒は美しい酸のストラクチャーを表現します。暖かく安定した2018年は、このクローンが本領を発揮するのに完璧なコンディションで熟しました。果実は洋梨、ライム、ネクタリンの風味をストレスを受けることなく蓄えました。手摘みしたブドウはすぐに冷却し、ほとんどは除梗してスキンコンタクト、少量は全房圧搾です。この少量の全房圧搾は、2017年から取り入れた手法で、凝縮した豊潤な果実にミネラル感を与えます。発酵は100%フレンチオーク新樽、マロラクティック発酵はせず、11ヶ月間熟成させます。その間、集中的にバトナージュを行うことで果実と樽が溶け合い、しなやかな質感と酵母の自己分解による旨みが加わるようにします。2018年は、ピュアで力強い果実の第一アロマ、その後ろにブリオッシュ、削ったナツメグ、黒鉛など複雑な香りがあります。味わいは緻密で、凝縮した果実、樽由来の甘いスパイス、フィニッシュは繊細な酸に裏打ちされた長い余韻が特徴です。CODE 11628ルーウィン・エステート アートシリーズカベルネ・ソーヴィニヨン 2017 (スクリューキャップ)Leeuwin Estate Art Series Cabernet Sauvignon希望小売価格 ¥8,500品種 カベルネ・ソーヴィニヨン 98%、マルベック2%Alc. 13.6%97 pts 2022 Halliday Wine Companion97 pts Huon Hooke, The Real Reviewカベルネは、主に1975年植樹の日当たりのよい無灌漑栽培のブロック8からです。とても小粒なので、果汁に対する果皮の比率が高く、力強いワインになります。収穫日の決定で最も重要なのはタンニンの生理的熟度ですが、未熟なタンニンの青さを出さないため、十分な日差しの下で成熟させる必要があります。そのため、冷涼だった2017年は綿密なキャノピー・マネジメントで日照を管理しましたが、悪天候のリスクが高まるシーズン終盤まで収穫ができず、まさに「忍耐のヴィンテージ」となりましたが、待つ甲斐はありました。エレガントに凝縮した香り高い果実を丁寧に手摘み、選果した後、発酵前の低温浸漬でタンニンを抽出、発酵中にはポンプオーバーをして、さらに色とタンニンを抽出します。その後、新樽50%、1年使用樽50%のボルドー産小樽に移し、マロラクティック発酵させてそのまま合計22ヶ月間樽熟成します。カベルネの深みをより感じるように、ブロック9のマルベック(1975年植樹、無灌漑栽培)を少量ブレンドしました。ステーキの味わいをより引き出すために塩コショウを振るのと同じ理屈です! 深みのある黒い果実のアロマに冷涼な年特有の繊細な芳ばしさ、力強い果実にドライハーブ、硬質なミネラル感、きめ細かいタンニンを感じます。