〈〈スチュワート・セラーズとガスリー・ファミリー・ワインズ〉〉テキサス州のテクノロジー企業の創業者兼オーナー、マイケル・スチュワートは、愛飲していたナパ・ヴァレーのワインを自分で造るため、2000年にスチュワート・セラーズを設立。2006年には息子のジェームズ、2013年には娘のキャロラインが共同経営者となり、2014年にはキャロラインの夫ブレア・ガスリーがワインメーカー兼ヴィンヤード・マネージャーとして参画する。同時に、ブレアとキャロラインは2014年にガスリー・ファミリー・ワインズを設立する。スチュワート・セラーズは、ナパ・ヴァレーAVAのポープ・ヴァレーにあるジュリアナ・ヴィンヤードを長期リース契約している。2022年には、ソノマ、マヤカマス・マウンテンズのムーン・マウンテンAVAにあるモンテシーロ・ヴィンヤードを購入、徐々に新しい品種を植えている。スチュワート・セラーズは2024年現在、ワイン22種類、全生産量9,000ケース。ガスリー・ファミリーは2025年に生産量を2,000ケースから4,000ケースに拡大する予定。◆ナパへとつながるきっかけ私はニュージーランド出身で、元々ワインとは関係なく、ビールが好きなラグビー少年でした。自分はクリエイティブな仕事が好きで、高校卒業後はグラフィックデザイナーとして働きましたが、数年後にはデジタル化が進みコンピューターに振り回されることになると気が付きました。次にすべきことを迷っていた時、ギズボーンにあるタイラフィティ・ポリテクニック(現在のイースタン工科大学)のワイン醸造学とブドウ栽培コースに入学が決まりました。当初はブドウ畑でトラクターを運転することを考えていましたが、最初の数週間でワイン造りが創造性を求める自分に合っていると気がつきました。◆南オーストラリアでの経験コースを修了するとすぐ、南オーストラリア州で顧客の注文に応じてブドウを圧搾する会社で働きました。客先のニーズに合わせてブドウを圧搾し、コンサルタントの醸造家と一緒に仕事をするというもので、ワイン造りのさまざまな方法や哲学を短期間に経験することができました。その間、カリフォルニアのポール・ホブス・ワイナリーで研修する機会を得、そこで同じくインターンとして働いていた現在の妻、キャロラインと出会いました。◆ナパに根を下ろす2011年、私たちはアメリカに戻り、結婚しました。私は再びポール・ホブスのもとで短期間働き、その後ソノマにある5世代の歴史がある、クンデ・ファミリー・エステートで働きました。クンデは生産量3,000tの大規模な企業で、自分のワイン以外にトレーダー・ジョーズやコストコ向けのワイン、そして他のワイナリー向けにさまざまな品種のプライベートブランドも造っていました。私は2012年からスチュワート・セラーズを手伝い始め、2014年にフルタイムのワインメーカーとして働くようになり、同時に、副業としてガスリー・ファミリー・ワインズも始めました。◆高品質果実にこだわる:スチュワート・セラーズでのワイン造りスチュワート・セラーズの目標は「最高のワイン」を造ることです。最高の畑から最高の果実を手に入れ、可能な限り最高のワインを造ること、すなわち素晴らしいブドウが生まれた畑とヴィンテージを表現することを目指しています。できる限りの要素を果実から引き出すため、より多くの色素とタンニンを比較的強く抽出し、その後、発酵と熟成を通して味わいを整え、口当たりを柔らかくします。ここでは、私はいわば彫刻家で、まず材料の塊から時間をかけて形に整えていくのです。スチュワート・セラーズでは長年、栽培農家からブドウを購入しています。ナパ・ヴァレーの畑はとても高価なので、畑を買うこと自体、自分たちには手の届かないことです。だから、逆にそれを利用し、自分たちの畑にとらわれず、最高の産地の最高の畑で栽培される最高の品種を探し出すのです。そのためには、栽培者と長期的な関係を築くことが重要です。なぜなら、1回のヴィンテージでワインを造ることはできないからです。どのようにブドウを育てるか、収穫は早くするか遅くするかなど、畑を理解するには4–5年かかります。ポール・ホブスに比べると、私の収穫は少し早めかと思います。そのほうが、テロワールをよりよく表現できると思うからです。ワインのフレッシュ感には酸がとても大切で、アルコール度数も少し低くし、料理に合うようにします。発酵はすべて培養酵母を使用します。何年もかけて選び抜いた培養酵母で、ワインにより異なる酵母を使います。これは元々は発酵を正常に完了させる保証のために始めたことです。赤ワインは樽で2年間熟成し、濾過せずに瓶詰めするため、糖分をすべて発酵させ、マロラクティック発酵を100%完了させることが大切です。糖分が残っていると悪いバクテリアの餌になるだけです。スチュワート・セラーズは、当初はナパ・ヴァレーのカベルネとシャルドネのみでした。その後、他の地域のシャルドネ、ピノ・ノワール、ロゼと広げていきますが、細部にこだわった高級なワイン造りは変わりません。ロゼとソーヴィニヨン・ブランを除き、すべて樽熟成を行います。ボルドー品種は2年間、ブルゴーニュ品種は1年間です。すべてフレンチオークで、新樽比率は品種によって異なり、ピノ・ノワールには28–30%が新樽、残りは古樽です。ボルドー品種はワインによって新樽の割合が40–85%と異なります。どの畑のどの区画にどのくらい新樽を導入すべきか理解するには数年かかります。2年間の樽熟成後は、楽しみな「ブレンディング」です。発酵後の段階で、樽熟成に合うかどうか、どの樽に相性がよいかなど、経験上分かっているので、樽に移す段階で、それぞれの樽が畑を表現し、そのまま瓶詰めできるような状態で、丁寧に慎重に樽詰めをしていきます。樽熟成後のワインに穴や隙間を感じれば、ブレンディングの段階で補修・補強することができます。その後瓶詰めし、6–12ヶ月後にリリースします。◆より自然なアプローチ:ガスリー・ファミリー・ワインズガスリー・ファミリーは、私の創造性の表現への欲求を満たす場として始めました。ワイン造りのルールに縛られず、さまざまな品種、さまざまな発酵スタイル、オーガニック栽培のブドウ、ミニマリズムが焦点で、世界最高級のワインを緻密に造るスチュワート・セラーズでの作業とは対極にあります。ガスリーでは、少なくとも有機栽培、可能であればバイオダイナミック農法や再生農法で栽培されたブドウを使います。ワイナリーでは、可能な限り添加物の使用を避け、硫黄のみ限定的に使用します。最小限のアプローチで、糖分とリンゴ酸を自然発酵させることのみに集中します。ブドウはすべて手摘みで除梗はせず、白ワインは直接圧搾機に、赤ワインは房ごと発酵槽に入れるので、途中の段取りは省略されます。果実を投入し、触らずに炭酸ガス浸漬で発酵させてから圧搾します。マセレーション(マセラシオン)する場合は、すべて足で踏み、道具を使って少しパンチダウンします。白ワインの場合は、発酵容器に直接圧搾して自然発酵させます。私は軽くて香り高い白ワインが好きなので、通常は冷蔵室に入れ、発酵中はかなり冷たい状態を保たせます。赤ワインのスタイルは、シラーの場合、ボージョレを思わせる微かな炭酸ガスのタッチを下層に感じるものから、マセレーションを行わない純粋な炭酸ガス浸漬のワイン、さらにはボージョレ・ヌーボーのようなワインまで造ることができます。◆2つのブランドが生む相乗効果今では、スチュワート・セラーズとガスリー・ファミリー・ワインズ、双方の要素を取り入れて、混ぜ合わせるのが喜びでもあります。経験を積み、自信が持てるようになると、市場の動向や人々の嗜好の変化を見て、舵をとってきました。スチュワート・セラーズでは、伝統的に225ℓのバリック(小樽)を使用していましたが、現在は徐々に500ℓのより大きなパンチョンに移行しています。また発酵では表現を広げるために工程の半分ほどは自然発酵も行い、その後純粋でクリーンな仕上がりを得るために培養酵母を使っています。過去2年間、ピノ・ノワールとグルナッシュで全房発酵の比率を高めてきています。まずは10%で始め、直近のヴィンテージでは40%に増やしました。最終的には、ブランドとしての優雅さを備えながら時の試練にも耐えうるワインを創り出す、そのような文化を持ったワイナリーを確立することを目指しています。PICK UP WINES#12868 スチュワート ナパ ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨン 2021産地:カリフォルニア州ナパ・ヴァレー品種:カベルネ・ソーヴィニヨン Alc.14.5%定価:¥21,450醸造:ブドウは破砕せず、全粒でステンレス槽発酵。マセレーション計26日間。フレンチオーク小樽で22ヶ月間熟成(新樽65%)。メーカーコメント:“スチュワート・セラーズの中核をなす、名刺代わりのフラグシップワインです。ナパ・ヴァレーの北から南に散在する高品質の畑から、より暖かく乾燥したタンニンがふくよかな北部の果実と、海の影響でより冷涼な確固とした酸とタンニンを備えた南部の果実を緻密につなぎ合わせ、まとまりのある風味にしています。”#12867 スチュワート トリ・カウンティ・カベルネ・ソーヴィニヨン 2022産地:カリフォルニア州メンドシーノ・カウンティ&ソノマ・カウンティ&ナパ・カウンティ品種:カベルネ・ソーヴィニヨン Alc.14.5%定価:¥13,200醸造:収穫は9月。除梗し、全粒でステンレス槽発酵。10ヶ月間樽熟成(新樽40%)メーカーコメント:“長年、3つの産地のカベルネを造りながら、凝縮したナパのカベルネと同じ高い品質で、より手頃なカベルネを造ることを考えてきました。凝縮したナパカベに比べ、メンドシーノはかなり冷涼で赤いチェリーの風味、ソノマは土っぽい風味と素晴らしい酸が特徴で、その3つの産地のバランスがブレンドの技です。自然が相手なので、ブレンド比率は毎年変わります。その年の風味を楽しんでください。”#12868 スチュワート ソノマ・マウンテン・シャルドネ 2022産地:カリフォルニア州ソノマ・マウンテン品種:シャルドネ Alc.14.4%定価:¥10,450醸造:ブドウは手摘みし、全房圧搾。樽発酵、樽熟成10ヶ月(新樽29%)。メーカーコメント:“ソノマ・マウンテンの小高い丘にある畑は、海から流れ込む霧や冷たい空気に包み込まれ、11時頃まで暖かくなりません。ブドウの生育は遅く、収穫はナパのカベルネと同じ時期になります。丘のすぐ上にある素晴らしい畑で、土壌が痩せているためブドウの木にストレスがかかり、よい凝縮感が得られます。それほど酸が強い畑ではないので、年によりマロラクティック発酵を調整します。”#12869 ガスリー・ファミリー・ワインズ パファーフィッシュ・レッド・ワイン 2022産地:カリフォルニア州品種:ジンファンデル81%/カリニャン8%/プティ・シラー6%/シュナン・ブラン5% Alc.14.1%定価:¥6,820醸造:有機栽培ブドウを全房で自生酵母によりマセラシオン・カルボニック発酵。4.5ヶ月間ステンレス槽熟成。樽不使用。メーカーコメント:“スチュワート・セラーズの緻密な醸造との自分の精神バランスを取るために造っています。安定性のための最小限のSO2を除きブドウ以外使っていません。無清澄、無濾過の素朴な手法です。残糖度が低く、酸は高めで、溌溂としたベリーがクリーンでフレッシュ、軽やかな中にも重層性がある「大人のフルーツポンチ」を楽しんでください。”